少し前に、ショパン国際コンクールを通して蘇ってきた記憶について綴らせていただきましたが、今回は特に牛田智大さんの演奏を通して感じたことを書きたいと思います。
私が牛田智大さんの演奏を初めて聞いたのは、彼がまだ幼い頃、日本人ピアニストとして最年少でCDデビューをしたとして、メディアに注目されていた頃。
きっと感受性がとても豊かなんだろうなという印象を受ける演奏と、幼いながらにとてもしっかりとした受け答えをする大人びた顔とは裏腹に、やっぱり可愛らしさの残る彼に、とても心を惹かれました。
私は、その頃確か大学生で、社会人になった時に、ふと今の彼はどうしているのか、どのような演奏をしているのだろうか、と気になりネットで検索してみたのです。
すると、コンサート中に倒れる、演奏を中断して退場する、ということがあったという情報が目に飛び込んできて、きっと大きなプレッシャーや彼の繊細さゆえに辛いことがたくさんあるのだろう、と思いました。
そんな彼の演奏を、こうして今回YouTubeにあがってきたショパンコンクールの動画を通してまた聞くことになったのです。
彼の演奏は相変わらず繊細で、でもたくましさを備え、彼の姿からは過去を乗り越えた貫禄のようなものを感じ取り、言葉にしがたい心の奥底から湧き出る思いを感じました。
そして、彼の演奏を通して、「ああ、生きているうちに聞きたい音楽がまだまだたくさんある。出逢っていない素敵な音楽がたくさんある。特に生で耳にできる音楽なんてどれほどあるんだろうか。人生短いんだ。」と思いました。
牛田智大さんの第一ラウンドの『革命のエチュード』(Etude in C minor, Op. 10 No.12)が特に心に響きました。以下リンクより、彼の演奏を共有させていただきます。
TOMOHARU USHIDA – first round (18th Chopin Competition, Warsaw) - YouTube
そして最近は本当に、ああ自分もまた演奏したいな、と思います。
演奏するのが嫌になったり、興味が持てなくなる時期もあったけれど、やっぱり私のこれからの人生の想像図には欠かせないんだ。
写真は、大学時代、ドイツ留学中に日本文化を紹介する機会があり、浴衣を着て久石譲さんの曲を演奏した時のものです。
微笑みと、色々な感情をくれる音楽に、ありがとう。